痛み(頭痛、腹痛、胸痛、手足の痛み)
痛み(頭痛、腹痛、胸痛、手足の痛み)
小児期の痛みの特徴は”痛い“という訴えがうまく伝えられないというところにあります。
乳幼児期は言葉で伝えるのが難しく、“激しく泣く”、“機嫌が悪い”、“顔色が悪い”などの症状だったり、学童期には心理的な原因で痛みを訴えることもあります。痛みを訴えるお子さんの中には緊急を要する病気が隠れていることもあり慎重な対応が必要となります。特に痛みで夜間目が覚めたり、日常生活の妨げになる(遊びをやめたり等)痛みは要注意です。
頭痛は、頭蓋内の痛みを感じる受容器が、血管の拡張や精神・筋肉の緊張、炎症や出血など何らかの刺激を受けることによって起こり、年長児の訴えが多い症状です。
小児期の頭痛の原因の多くは一次性頭痛である片頭痛、筋緊張性頭痛です。
何らかの疾患が原因で起こる頭痛は二次性頭痛と言われており、発熱や副鼻腔炎、髄膜炎に伴うことがあります。また、もやもや病、脳腫瘍など重篤な病気が原因で引き起こされる場合もあります。
小児期には少ないですが高血圧を来す疾患(大動脈縮窄、高安病、腎疾患等)でも頭痛が起こることがあります。
当院ではお子さんの症状、状態に応じて他施設にCT検査やMRI検査を依頼することがあります。
子どもの腹痛は、「嘔吐、下痢、消化管出血」のページで挙げたように、感染胃腸炎(ノロウイルスやロタウイルス)や便秘が原因であることが多く、お腹の病気以外(腎盂腎炎、肺炎、気管支喘息等)でも起こることがあります。
乳幼児期の腸重積や腸回転異常による中腸軸捻転、鼠経ヘルニア嵌頓による腹痛は“お腹が痛い”と訴えることが難しい年齢ですので“顔色が悪い”、“元気がない”、“泣き止まない”、“機嫌が悪い“などのいつもと様子が違う状態から疑うことが大切になります。腹痛の代表的な疾患に虫垂炎(いわゆる盲腸)がありますが、幼児期の虫垂炎は腹痛の訴えや経過(心窩部から右下腹部に移動する)が典型的ではなく、発熱や下痢症状も伴っていることがあり診断された時には腹膜炎を合併していることもあり注意を要します。幼児期から学童期に多いIgA血管炎(紫斑病)は紫斑の症状が出る前に腹痛を訴えることがあります。学童期から思春期にかけて卵巣嚢腫茎捻転や精巣軸捻転などの生殖器の異常も腹痛の原因として考えなければいけません。また炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎やクローン病)や過敏性腸症候群などの機能性腹痛も年長児の腹痛の原因として挙げられます。
当院では腹部の触診や聴診だけではなく積極的に超音波検査(エコー)も行い緊急性の高い疾患の診断に努めています。お子さんの症状、状態に応じて造影CT検査等の詳しい検査が必要な場合は入院検査治療が可能な病院に紹介させていただきます。
子どもの胸痛の原因は、成人のような重篤な心臓の病気であることは非常に稀で、その多くが胸郭を形成する筋骨格系の問題(肋軟骨炎、筋性前胸部痛、前胸部キャッチ症候群)が原因のことが多いです。発熱や咳、喘鳴(ぜーぜー)も伴っているようなら気管支炎や肺炎、気管支喘息や縦隔気腫が原因かもしれません。咳や喘鳴に伴って急に起こる胸痛に気胸があります。やせ型の年長男児によく見られます。息を吸うと痛みが増して徐々に呼吸が苦しくなってくることがありますので早期の対応が必要です。ごく稀に小児期にも心疾患による胸痛があります。心筋炎・心膜炎、肥大型心筋症、冠動脈異常などは突然死の原因にもなりうる重篤な病気です。
当院では胸痛のお子さんには聴診や触診だけではなく全例に心電図検査、心エコー検査も行い、心疾患がないか確認します。レントゲンやCT検査が必要なお子さんは入院検査治療が必要な施設に紹介させていただきます。
肋軟骨関節(前胸部で肋骨の骨部と軟骨部が接する部位)の炎症性疼痛。片側性で差し込むような一時的な痛みで、押さえると痛むのがと特徴的です。
運動をやっている人に良く見られ、重いリュックや強い咳がある人でも見られます。発熱などの先行症状があることが多いです。以前は流行性筋痛症と呼ばれていました。
安静時に起こることが多く、胸の真ん中で痛い場所がはっきりしており、差し込むような痛みが30秒~3分程度起こり自然に良くなります。深呼吸で悪くなることがあります。
転倒や打撲による外傷の既往がない小児期の手足の痛みで代表的なものには幼児期によくみられるいわゆる“成長痛”があります。手足の痛み以外に随伴する症状で発熱があれば化膿性関節炎・骨髄炎・筋炎、蜂窩織炎といった重症細菌感染症のことがあり早急な対応が必要になります。特に乳幼児期に“おむつを替える時泣きかたが違う”、“はいはい”や“つかまり立ちをしなくなった”などのいつもと違う状態も大切な症状の一つです。また、非常に稀ですが神経芽細胞腫、白血病、原発性骨腫瘍も小児期の手足の痛みを伴うことがあります。痛みの程度は様々で軽度の痛みや間欠的な痛みの時もあり、夜間に悪化することが多いです。ギランバレー症候群も手足の筋肉の痛みと圧痛が見られ、徐々に筋力が落ちてきます。
当院では血液検査で細菌感染症かどうかの判断を行います。重症細菌感染症が疑わしい場合や、悪性疾患が疑わしい場合もMRI検査等が必要になりますので入院検査治療が可能な病院に紹介させていただきます。